HAEと共に生きる~前向きな心で日常を大切に楽しんでいます~

患者さん情報
10代 女性
症状発現
11歳

ご自分がHAEであると知ったのはいつごろでしょうか。

私は1歳のときにHAEと診断され、物心がつく頃には自分がHAEであることを自然に理解していました。日頃から母にHAEについて詳しく聞いており、発作が起きた場合の対処法も知っていたため、初めて発作が起きたときもあまり驚かず、冷静に対応できました。

HAEの症状が初めて出たのはいつ頃で、どのような症状でしたか。

初めてHAEの症状が現れたのは、11歳、小学校5年生の終わり頃のことです。学校に登校し、校庭で友達と遊んでいたとき、片方の足の裏が腫れ始め、靴がきつく感じました。遊びに夢中になっているうちに腫れは気にならなくなり、そのまま1日を過ごして帰宅しましたが、夜になって腫れのことを思い出し、母に伝えました。そのときも足の裏の腫れはわずかに残っており、土踏まずが平らになったように感じました。

【医師からのコメント】 千葉大学医学部附属病院 腎臓内科:本田大介先生
初めての症状が出た際に驚かず冷静に対応できたことは素晴らしいです。HAEは早期に症状を把握し、家族や医師と相談することが大切ですので、このような冷静な対処ができると、より安心して日常生活を送れるでしょう。手足の腫れや腹痛などの症状が気になる方は一度セルフチェックシートで確認してみてください。

現在はどのような治療を行っていますか。

1年以上前から、予防治療薬を使用しています。この薬は自己注射タイプなので、2週間に1度、自分でお腹に注射をしています。予防薬を打ち始めて以来、以前のような発作がほぼ起こらなくなり、日常生活が安定しました。ただ、最近は、薬を注射してから2週間が経つ1~2日前になると、軽い腹痛を感じることがあります。腹痛は30分から1時間程度で自然に治まるため、発作時の治療薬を使用せずに、少しの間我慢してやり過ごしています。また、もしもの場合に備えて急性薬を自宅で保管していますが、発作がほとんど起きなくなったため、幸いまだ使用する機会はありません

【医師からのコメント】 薬師寺慈恵病院:薬師寺泰匡先生
治療技術の進歩もありますが、それを積極的に取り入れ、自身で症状を管理する努力が、発作の頻度を減らし、症状も軽減されていますね。このような継続的な取り組みが、安心して穏やかな日常を過ごす力になっていると感じます。

 日常生活でHAEの症状とどのように付き合っていますか。普段から気を付けていることも教えてください。

最近、空腹や食べ過ぎが発作に関わることに気付きました。お腹が空きすぎると、発作のような強い腹痛が起きやすいため、空腹を感じた際には軽く何かを口にするよう心がけています。一方で、食べ過ぎが発作につながる人がいると他の方から伺ったことがあるため、食べ過ぎないようにも気を付けています。修学旅行などの学校行事や遠出の際には、念のため発作時の治療薬を持ち歩いています。保冷バッグに入れて持ち歩くのは少し手間ですが、安心して過ごすために欠かせない準備です。また、予防薬のおかげで、現在は発作がほとんど起きないので、HAEの発作の心配などを忘れて楽しく過ごす時間が増えています。

【医師からのコメント】 千葉大学医学部附属病院 腎臓内科:本田大介先生
空腹や食べ過ぎを避けるなど、ご自身での症状管理がしっかりと行われているのは素晴らしいですね。日々の工夫によって安心感が生まれ、HAEの存在を意識せずに過ごせることが、生活の質向上にもつながっているでしょう。日ごろから主治医に相談し、予防薬や治療薬を処方してもらうことが大切です。

今まで、学校生活や日常生活で困ったことやそういったご経験があればお答えください。

予防治療を行う前は、週に2~3回ほど学校で腹痛に悩まされ、頻繁に保健室を訪れていました。そのため授業を多く休まざるを得なかったことが嫌でした。特に楽しいイベントがある日には、発作があっても家に帰りたくないと先生や母に訴えたこともあります。
また、旅行の際は急性薬の注射を持ち歩く必要があり、荷物が増えますし、忘れないように注意が必要です。さらに、2週間に一度の自己注射も欠かせませんが、カレンダーに予定を入れていても時々忘れることがあります。発作を防ぐために、こうした日々の管理が欠かせないのは大変だと感じています。

【医師からのコメント】 薬師寺慈恵病院:薬師寺泰匡先生
予防治療がなかった頃のご苦労が多かった中、現在は発作が抑えられ、生活の安定が保たれていることはとても心強いですね。安定した日常生活を送れるよう、学校関係者への疾患の理解を広めることが重要だと考えます。

趣味や楽しみ、日常生活の中で大切にしていることがあれば教えてください。

私の趣味は絵を描くことと、歌を歌うことです!カラオケで歌いすぎて痛くなると、母が喉の発作を心配するため、喉のケアは少し意識しています。日常生活では、腹痛を防ぐために、お腹を空かせすぎないこと、また、食べ過ぎないことにも注意しています。
幸い、予防治療のおかげで日常生活ではHAEを意識せずに楽しむことができています。病気のことにとらわれず、毎日を充実させることが大切だと感じています。

【医師からのコメント】 千葉大学医学部附属病院 腎臓内科:本田大介先生
HAEがあっても好きなことに打ち込める生活が実現しているのは、予防治療の効果が大きいです。無理せず、自分らしい楽しみを大切にして過ごすことが、HAEと共に充実した生活を送る鍵になっていると思います。

HAEは希少疾患でいまだに認知度が低い疾患です。いまだにHAEの診断がつかず苦しんでいる患者さんが多くいらっしゃいます。現在、同じような症状で苦しんでいる方々に対して、どのようなメッセージを伝えたいですか?また、読者にメッセージがあればおしえてください。

痛みや不安を抱える辛さはとてもよくわかります。しかし現在は自宅での予防治療や急性発作への対応が可能になりました。HAEは完治するわけではありませんが、そのことに不安がってしまうのではなく、もっと良くなるという光があることもきちんと知ってもらえたらいいなと思います。また、生活していてHAEで困ることもなくなる、と知ってほしいです!

【医師からのコメント】 薬師寺慈恵病院:薬師寺泰匡先生
ご自身の経験から前向きなメッセージを伝えることは、不安に感じている多くの人の励みになるでしょう。治療法が進化し、発作を管理しやすくなった現在では、安定した生活が送れる希望があることを知ってもらえればと思います。 症状が気になる方は一人で悩まず、医療機関を受診してみることをお勧めします。