HAE(遺伝性血管性浮腫)は遺伝性の疾患であり、親から子へと遺伝する可能性があります。 しかし、すべての患者さんが家族内で発症するわけではなく、何らかの原因で遺伝子に異常が起こってHAEになることもあります。 また、遺伝子を受け継いでいても症状の現れ方には個人差があり、発作の頻度や重症度はさまざまです。

本ページでは、HAEの遺伝の仕組みや、家族内での発症リスク、遺伝を考慮したセルフチェックの重要性について詳しく解説します。

HAEと遺伝の関係について

遺伝とは、生物が持っている性質が世代から世代へと受け継がれていくことで、親から子へ性質を伝えるものが遺伝子です。遺伝子の一部に変異があると、たんぱく質を正しく作ることができなくなり、それが原因で病気を引き起こすことがあります。

遺伝子はひも状のらせん構造をしたDNAでできていて、DNAが規則正しく折りたたまれて収納された構造が「染色体」と呼ばれています。「染色体」は棒状になっており、一つの細胞に対して46本が2本1組の対になって存在しています。1番染色体〜22番染色体から成る「常染色体」の対と、「X染色体」または「Y染色体」の2本の対からなる「性染色体」で構成されています(図1)。

(図1) 人の染色体

図1:人の染色体

HAEは、C1インヒビターの遺伝子の一部に変異があることで発症する遺伝性の病気であり、常染色体顕性(優性)遺伝により遺伝します。C1インヒビターの遺伝子の異常は、50%の確率で親から子に遺伝します。
一方、何らかの原因で遺伝子に新生変異(両親ともに正常だった遺伝子に新たに起こる変異)が起こってHAEになることもあります(孤発例)。孤発例の患者さんでも50%の確率で遺伝子の異常がお子さんに遺伝します。

(図2) 変異のある遺伝子が受け継がれる可能性

図2:変異のある遺伝子が受け継がれる可能性

(図2)は男性のHAE患者さんと正常な女性との間に出る優性遺伝形式ですが、男性と女性でHAE発症者を逆にしても同じことになります。一組の遺伝子の中に正常な遺伝子をおさえつける変異した遺伝子(HAEの優性遺伝子)を両親のどちらかが持つ場合、その変異した遺伝子が50%の確率で子に現れます。常染色体遺伝なので、子が男子でも女子でも50%の確率で遺伝します。また、子の兄や姉がすでに優性遺伝を受け継いでいても、その子が優性遺伝を受け継ぐ確率が50%であることに変わりはありません。

HAEの遺伝と早期診断のポイント

HAEの原因となる遺伝子の変異は、1/2の確率で親から子に受け継がれます。
このため、HAEと診断された場合、その家族や親戚にもHAEの方がいる可能性があります。症状の有無にかかわらず、あらかじめ検査を受けてHAEと診断を受けている場合、腫れや腹痛などの症状が出たときにすぐに適切な対応をすることが可能です。そのために家族も検査を受けておくことがとても大切です。

HAEの遺伝と発症のタイミング

C1インヒビターの遺伝子の異常が認められていても、すぐにHAEの症状が出るとは限りません。
HAEの発症には個人差があり、子どもの頃から発作がある人もいれば、大人になって初めて発作を経験する人もいます。

HAEの可能性は?遺伝リスクとセルフチェックの重要性

HAEの遺伝リスクを正しく理解し、自分や家族の状態を確認するために、まずはセルフチェックを試してみましょう。

こんな方はセルフチェックをおすすめします

  • 家族にHAE患者がいる。
  • 繰り返し原因不明の腫れや腹痛がある。
  • じんましんを伴わない腫れを経験したことがある。
  • 過去にアレルギーや消化器疾患と診断されたが、薬が効かなかった。

HAEは正しく診断されることで、適切な治療や対策が可能になります。
「もしかして?」と思ったら、まずはセルフチェックを試し、必要に応じて専門医へ相談しましょう。

HAE(遺伝性血管性浮腫)ファミリーテスト

ファミリーテストは、HAE患者さんのご家族·ご親戚など血縁者を対象として、HAEを診断するための検査です。医師の問診と血液検査でHAEを診断することができます。もし、HAEと診断された方がご家族におられる場合は、血縁者(ご家族·ご親戚)の方にファミリーテストを受けることをお勧めします。

※遺伝について不安や心配なことがある場合は、遺伝カウンセラーに相談することも可能です。
詳しくは日本認定遺伝カウンセラー協会をご確認ください。