HAEは腫れやむくみが全身のあらゆる部位におこる疾患です。症状の多くは皮膚と消化管に起こります。
頻度としては低いものの、咽頭浮腫は窒息死をもたらす危険性があるので注意が必要です1) 2)
多くの場合、症状は通常24時間で最大となり数日で消失します3)

皮膚の場合は顔面やくちびる、手足、腕、脚などに、かゆみのない腫れが起こります。消化管の場合は激しい腹痛が起こることがあり、また、腹部膨満感、吐き気や嘔吐、下痢などの症状があらわれることがあります。喉頭の場合は、嚥下困難、胸が締め付けられるように痛い、声が変わる、声がかすれる、発声しづらくなる、呼吸困難感や息苦しくなるなどのさまざまな症状があらわれます。
また、HAE患者さんの50%は一生のうち一度は喉頭浮腫を経験するとされています4)
精神的ストレス、外傷や抜歯、過労などの肉体的ストレス、妊娠や生理、薬物などが発作の引き金となることが知られています3)

HAE発症時の症状の特徴(部位別)

HAE(遺伝性血管性浮腫)の発作は、体のさまざまな部位に影響を及ぼすことがあります。これにより、患者さんは異なる症状や痛みを経験することがあります。発作の特徴的な部位ごとの症状を理解することで、早期に対処しやすくなります。

腫れ

皮膚の腫れの影響

HAEの症状である腫れやむくみは体の様々な部位に発生しますが、皮膚では顔、くちびる、手足、腕、脚に現れることが多いです。特徴として、赤みやかゆみがなく、じんましんが伴わない点が挙げられます。 HAEでは手足であれば片側(非対称性)に境界がはっきりしない腫れぼったいむくみが突然あらわれ1)、通常は24時間でピークとなり、数日後には跡形なく消えます2)。

  • 1)大澤勲 編:難病 遺伝性血管性浮腫(HAE). 医薬ジャーナル社. 2016.
  • 2)堀内孝彦 他:日本補体学会学会誌 「補体」 57(1):3-22, 2020

息苦しさ・呼吸困難

のど(呼吸器官)への影響

のどが腫れると、飲み込みにくくなる、のどに違和感がある、声がかすれる、呼吸が苦しくなるなどの症状が起こります1)。腫れがひどくなり、気道がふさがれると窒息する恐れがあり、非常に危険です。症状に気づいたら、すぐに救急車を呼びましょう。早期発見と早期対応が重要です。

  • 1)大澤勲 編:難病 遺伝性血管性浮腫(HAE). 医薬ジャーナル社. 2016.

腹痛

腹痛による影響

消化管(胃や腸)が腫れた際の症状はさまざまですが、激しい腹痛が起こることがあり、また、吐き気や嘔吐、下痢もみられることがあります。嘔吐や下痢が起こったりすれば、学校生活や仕事など日常の生活に影響を及ぼします。

HAEにみられる症状

顔面の浮腫(発症直後 / 発症14時間後 / 発症17時間後)
顔面の浮腫(発症直後 / 発症14時間後 / 発症17時間後)の写真

発症事例:

HAEによる浮腫発作は、血管が存在するところならどこにでも起こる可能性があります。全身のあらゆる場所に出現しますが、皮膚の場合は四肢や顔面、陰部など、頭頚部の場合は咽頭・喉頭や舌などに比較的多く生じます。同時に複数の部位が腫れることもあります。頭頚部に生じた場合は発語、飲食などに支障をきたします。

くちびるの浮腫(発作時 / ほぼ正常時)
くちびるの浮腫(発作時 / ほぼ正常時)の写真

発症事例:

HAEでは、顔面に浮腫が生じることがあり、特に眼瞼や口唇に現れる場合が多いとされています。中でも口唇が腫れると目立ちやすく、日常生活に影響が出ることもあります。また、顔面の浮腫は心理面への負担を感じさせる場合もあるため、適切な予防治療や早期の治療が大切と考えられます。

手の浮腫
手の浮腫の写真

発症事例:

急に手がグローブのように腫れたりします。発作は通常24時間でピークとなり72時間でおさまることが多いですが、それ以上続くこともあります1)

  • 1)「遺伝性血管浮腫(HAE)ガイドライン(改訂2023年版)」一般社団法人日本補体学会HAEガイドライン作成委員会

患者さんのメッセージ

HAEの症状が及ぼす生活への影響

HAEのすべての発作は生活に影響をおよぼすことがあるため、どの部位の発作でも早期治療をすることが重要です。
HAEの発作が起きると、仕事や学校を休む必要がでたり、車の運転や料理、運動などの日常生活を満足に過ごすことができなくなります。
HAEは治療によって 症状を管理していける疾患で、国内外のHAE診療ガイドラインにおいても、発作(腫れ)の部位によらず、早期治療が重要であると記載されています。※1 ※2

主治医と相談し、正しく治療を受けることでHAEと付き合っていくことができます。

  • ※1WAO/EAACI遺伝性血管性浮腫治療ガイドライン2021年改定版
  • ※2日本補体学会「遺伝性血管性浮腫 診療ガイドライン 改訂2023年版」