HAE(遺伝性血管性浮腫)は、問診、身体所見(視診・聴診・触診・打診などにより患者さんの身体から情報収集すること)から得られた症候からHAEを疑い、検査を行って診断を確定します。
HAE(遺伝性血管性浮腫)を疑う症候
下記のような症状のある患者さんはHAEの疑いがあります。
- 皮下浮腫、粘膜下浮腫(痒みを伴わない、あらゆる部位)
- 消化器症状(腹痛、吐き気、嘔吐、下痢)
- 喉頭浮腫(3歳以下では稀、喉頭浮腫を生じたにもかかわらず適切に治療をされない場合の致死率は30%)
- 発作は精神的ストレス、外傷や抜歯、過労などの肉体的ストレス、妊娠、生理、薬物などで誘発される。
- 発作は通常24時間でピークとなり72時間でおさまるが、それ以上続くこともある。
- 家族歴がある。
- 発症は10~20歳代が多いが、あらゆる年齢で発症しうる。
(一般社団法人日本補体学会HAE ガイドライン作成委員会:遺伝性血管性浮腫(HAE) ガイドライン改訂2014 年版.2014.より)
HAEかも?と思ったらチェックしてみましょう
HAE(遺伝性血管性浮腫)は、適切に診断を受けることで治療可能な病気です。原因に心当たりのない腹痛や浮腫に悩まされれている方、HAEの可能性がないか確認してみましょう。
早期の診断と治療が必要
HAEの症状に心当たりがある方は、放置せずに病院を受診することをおすすめします。予防薬等を使った適切な治療を受ければ、症状をあらかじめ防ぎ、日常生活を送ることが可能です。
セルフチェックシートで確認してみましょう
疑わしい症状がある場合、簡単なチェックシートを活用して、HAEの可能性について確認してみてください。その結果に基づいて、医療機関を受診する第一歩を踏み出しましょう。また、当法人ではHAEの診断・治療が可能な医療機関一覧を掲載しておりますので是非ご活用ください。
HAEを疑った場合の診断アルゴリズム
HAEの疑いがある場合は、下図の手順で診断を行います。
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(一般社団法人日本補体学会HAE ガイドライン作成委員会:遺伝性血管性浮腫(HAE) ガイドライン改訂2019 年版. 2020. (堀内孝彦 他 日本補体学会学会誌「補体」 57(1):3-22, 2020)より)
- 血液検査:C1-INH活性とC4を測定し異常を確認します
- 家族歴の確認:家族にもHAEを疑う症状がある方がいないか確認します
- 遺伝子検査:血液検査と家族歴の確認をしても確定診断に至らない場合、遺伝子検査を行います
それぞれの結果に基づき、最終的にHAEの型(1型・2型・3型)を特定します
HAE診断の流れ
1.医師による詳しい問診
正確な診断を受けるためには、医師との問診が重要な役割を果たします。診察の際には、以下のような症状について詳しくお伝えいただくとよいでしょう。
- かゆみを伴わない腫れがあるか
- 繰り返される腹痛や腫れがあるか
- 喉の腫れや詰まり感が生じたことがあるか
- ご家族に同様の症状を持つ方がいるか*1
*1: ご家族の中に「HAE(遺伝性血管性浮腫)」が出ていない「孤発例」の患者さんもいるため、あくまでも初回問診の参考として聞き取りをします。
本サイトで提供しているチェックシートを活用することで、医師が詳細な情報を把握しやすくなり、的確な診断に役立ちます。
2.血液検査で具体的な数値を確認し確定診断を行う
HAEを疑う症候があった場合には、確定診断のために血液検査を行います。主な血液検査は、遺伝性血管性浮腫診療のためのWAOガイドラインで推奨されている補体C4濃度、C1インヒビター活性およびC1インヒビター定量となります(表)。これらの検査で異常に低値である場合は、再検査を行って診断が確定されます。
※C1インヒビター定量試験は保険適応がなく、特殊な状況でしか検査ができません。
補体C4濃度 | 補体C4の低下は発作時に必ず低下しています。発作のないときでも患者さんの98%で低下が認められます1) |
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C1インヒビター活性 | HAE(遺伝性血管性浮腫)の主な原因であるC1インヒビターがきちんと働いているかが分かります。HAE患者さんでは発作時に50%以下となります。発作のないときでも25%以下であることが多いです。 |
C1インヒビター定量 |
HAE Ⅰ型とⅡ型の鑑別を行うことができます。 ※現在、わが国ではC1インヒビター定量試験は保険適応外であり、HAEⅠ型とⅡ型の治療法は同じであるので必須の検査ではありません。 |
1) Bowen T, et al : Allergy Asthma Clin Immunol 6: 24 , 2010.
適切な診断のために
HAEの疑いがある場合、医療機関を受診することで病気の早期発見と治療が可能になります。本サイトでは、HAEの診断や治療が可能な医療機関を検索できるページを提供しています。不安を感じたら、まずは近くの医療機関を受診することをお勧めします。正しい診断を受けることで、適切な治療への一歩を踏み出せます。