遺伝性血管性浮腫(HAE) Doctor to Doctor 遠隔相談 のご案内
当法人では、希少疾患であるHAEの早期診断率向上を目指し、専門医への無料相談を受け付けています。
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HAEの症状: 腹部
HAE患者に高頻度でみられる症状に腸管の浮腫による腹痛があり、患者の93%が経験しているという報告1)もあります。また、腹痛に伴い、嘔吐や下痢、めまいなどが現れることが多くあります。HAEの患者では、この腹部発作を10代の頃から繰り返してきたという人が少なくなく、「過去に繰り返す原因不明の急性腹症や急性腸炎で何度か救急外来にかかったことがある・入院したことがある」という既往歴をもつ場合は、鑑別診断にHAEを加える必要があります。
腹部症状
HAEに起因する腹部症状は、腹部違和感などの軽微なものから、腹膜炎や消化管穿孔を疑うほど非常に激烈な腹痛を呈するものまで、幅広い症状を認めます。浮腫のために腸閉塞とも類似した症状を呈し、腸蠕動等により間欠的に症状の憎悪を繰り返し嘔吐なども伴います。しかし、HAEが原因である以外の急性腹症とは異なり、発熱や腹膜刺激症状などを認めることはほとんどありません。随伴症状として多いものは、嘔吐(70%)、下痢(40%)、めまい(90%)で、浮腫が十二指腸から空腸に起こると嘔吐、大腸に起こると下痢を伴うことが多いといわれています2)。ほかに、まれではあるものの意識障害、テタニー、腸重積を伴う場合もあります。
腹部発作の前駆症状として、疲労感、聴覚過敏、飢餓感などが患者の70%にみられます2)。
HAEの浮腫発作は、24時間でピークとなり、72時間で治まることがほとんどですが、腹部発作では平均4日間で、症状のピークは2日目であることが多いようです2)。
また、発作の初期では、血液検査等であまり異常は認められません。白血球をはじめとする血液細胞増加等の変化は、腹部症状が重度である場合でもそれほど異常を認めません2)。
専門医が教える診断のポイント
HAEの腹部発作と他の急性腹症との鑑別
腹痛症状のみでHAEを鑑別することは非常に難しいです。なぜなら、症状が激烈のわりには、検査所見でそれほど異常を呈しないことも多く、炎症反応の上昇があっても軽度でとどまることが多いからです。そこで鑑別診断のためには、問診として過去の浮腫発作の有無や部位、家族歴などを詳しく尋ねることが重要です。また、HAEでは、C4が低値を示すため、原因不明の繰り返す腹痛では、C3、C4等の補体を測定し、C4のみが低値の場合はHAEを強く疑うことが重要です。
HAE に起因する腹部発作の特徴
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HAE を鑑別するための問診
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画像診断のポイント
急性腹症の鑑別のため、腹部CT検査や超音波検査が有用です。
HAEの画像所見として、初期は一部腸管の粘膜下層を中心とした浮腫や、腹水が出現します3)。
上記検査所見は、症状の改善・消失に伴い、早期に改善します。
小腸を中心に明瞭な三層構造を有する著明な浮腫性壁肥厚、多量の腹水を認められる
症例から考えるHAE診断のポイント
[症例1 23歳・女性]
(主訴)下部腹痛、嘔気・嘔吐
(既往歴)急性腹症での入院歴(4、5回の入院)
(現病歴)急激に増悪した下腹部痛を訴え、受診
画像提供:佐々木善浩(国立病院機構災害医療センター消化器内科)
(受診後経過)採血にて白血球が高値を呈していたが、他の検査所見は正常であった。急性腹症の鑑別のため、CT検査を施行した。画像所見では小腸を中心とした明瞭な三層構造を有する著明な浮腫性壁肥厚と、大量の腹水が認められた。原因不明の急性腹症を繰り返していたことと画像所見からHAEの可能性を考慮した。血清補体価を測定し、C3:61mg/dL、C4:6mg/dL、CH50:6U/mLであり、C4の低値を認め、HAEが非常に強く疑われた。C1インヒビター活性を追加検査し、検出以下であったことから、HAEと診断した。この症例に対する診断としては、以下の診断ポイントで挙げたことを問診で確認しながら行った。
診断ポイント
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1) Bork K, Meng G, Staubach P, Hardt J. Hereditary angioedema: new findings concerning symptoms, affected organs, and course. Am J Med. 2006; 119: 267-274.
2) 大澤勲編『難病遺伝性血管性浮腫HAE』、医薬ジャーナル社、2016年8月
3) Farkas H, Harmat G, Kaposi PN, et al: Ultrasonography in the diagnosis and monitoring of ascites in acute abdominal attacks of hereditary angioneurotic oedema. Eur J Gastroenterol Hepatol 13(10):1225–1230.2001
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※本記事は2022年に作成した内容です。治療の際は最新の情報をガイドライン等でご確認ください。